【Web3】Web3とは?キーワードは「分散」と「価値」
この記事を書いているのは2023年2月です。
1年前(といっても数ヶ月前ですが・・・)は、「冬の時代」と言われるほど業界が厳しくなった年でした。
大手取引所「FTX」や安全と言われていたステーブルコイン「UST」の破綻など、かなり投資家にダメージを与えつつ、業界への不信の元となるニュースが報道されました。
参考:テラ、セルシウス、FTXの3大ショック 価格3分の1になった2022年の仮想通貨業界を振り返る−Yahoo!ニュース
このまま低迷が続くかとも思われましたが、状況は少しずつ良くなっています。
というのも、今までの投機的な側面ではなく、本当の意味で投資対象となり得る技術なのかを判断される時期となっているからです。
そして、厳しい状況にありながらも開発者達は常に技術を改善させ続け、「Web3」という概念を広く様々な分野に普及させています。
だからこそ一般の自分たちも、もう一度「Web3」とは何なのか。把握することが大事です。
「Web3」とは概念である
「Web3」は特定の技術を表しているわけではなく、ブロックチェーン技術とそれにより実現できる事を元にした、新しいインターネットの概念のことです。
この「Web3」の概念は、イギリスのコンピューターサイエンティストでイーサリアムブロックチェーンの立ち上げにも関わった、ギャヴィン・ウッド博士が提唱しました。
正直、自分はあまり「Web3」という言葉を意識したことは無いのですが、勉強していくうちにギャビン・ウッド博士だからこそ考えついた世界を作れる概念なんだなと腑に落ちました。
というのも、イーサリアムブロックチェーンはブロックチェーン上でアプリケーションを動かす「仮想マシン」というコンセプトで開発され、それまでのブロックチェーンと一線を画す存在でした。
いまではそのようなコンセプトのブロックチェーンは増えて来ていますが、ブロックチェーンを世に広めたビットコインブロックチェーン(とわかりやすく書いておきます)はそうではありませんでした。
ビットコインブロックチェーン自体は、ちょっと雑な言い方になりますが、送金に関係するプログラム以外をブロックチェーン上で動かすことは考慮されていません。構成されるネットワークを利用して、別階層(レイヤー)でプログラムを動かすという仕組みです。
イーサリアムブロックチェーンの場合は、最初からスマートコントラクトによる様々なプログラムをブロックチェーン上で動かす事を目的として開発された、まさにマシンなのです。
なので、私達が現在使用しているプラットフォームのサービス(ネットバンキング、ネット通販、ネット予約などなど)を、ブロックチェーンの参加者同士がプログラムを通じて直接やり取りをするという世界が、最初からギャビン博士には見えていたからこそ提唱された概念なんだろうなと思います。
このことから「Web3」という概念は、今まで自分たちの生活を便利に変えてきたインターネットの概念を変えるものなので、「次世代のインターネット」という呼ばれ方もしています。
とはいえ、なぜ「Web3」が必要とされるようになったのか?なぜ注目されているのか?
その答えは、インターネットの歴史にあります。
Web1.0 − 一方通行のインターネット
最初に登場したインターネットは「Web1.0」と呼ばれています。
Webサイトの登場や電子メールの普及など。今までの情報伝達を加速し、革命を起こしました。
しかし、Webサイトも閲覧者は見るだけ。電子メールもやり取りをするとはいえ、同時に行うことは出来ないので、通信は一方通行でした。
なので、WEB制作者や利用者が相手に向けて一方的に発信していた時代で、一般層への普及はハードルが高いものでした。
そこからIT技術は進化し、現在自分達が使用しているインターネットの世界が生まれたわけです。
Web2.0 − 双方向のインターネット
現在自分たちが使用しているインターネットは、双方向でのやり取りを重視したサービスが主流となっています。
情報発信者が提供する情報に対して、閲覧者が何かしらの反応を返すことができるようになりました。
それに伴い、FacebookやツイッターといったSNS、Youtubeといった動画配信プラットフォームの登場により、誰でも情報を発信できるようになっています。
また、クラウドサービスによって情報発信だけでなく開発や共有も同時に行いやすくなっているとも感じます。
しかし、これらのサービスにはプラットフォーマーの提供によるものが多いのも事実。
GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)と呼ばれる大手テック企業が誕生し、利用者が集中するようになります。
すると、利用者が持っている情報も必然的にこの大手テック企業の元に集まりました。
その情報を使って利用者がさらに便利にインターネット技術を使えるサービスを提供し、さらに企業としては成長、発展を遂げていきます。
が。それがたまにニュースを賑わせるリスクをはらむことになったわけです。
悪意のあるハッカーが個人情報を盗み取ったり、情報に価値があるため漏洩させてしまったり。
企業の信念や規約にそぐわない利用者を排除したり。
このような状態が生まれてしまっているのも事実です。もちろん、利用者の公平性や社会性を考えての対応ではありますが。
このようなことが起きることで、法規制などで利用者保護の動きが高まりましたが、同時に利用者のセキュリティ意識の高まりや、自身の利用データ保護の意識が高まり、一部の大手テック企業が情報を保有していることが問題視されるようになったわけです。
そこで、利用者同士による直接のやり取りを実現できる、ブロックチェーン技術が注目されるようになりました。
「Web3」の特徴とは?
このように便利さが増した反面、問題を持つようになってしまった今のインターネット技術に対する解決策として、「Web3」で利用される技術が提案され、日々研究・開発が進められています。
それにより提供されるサービスの目的や形が違いますが、「Web3」と言われる技術には共通の特徴があります。
分散化
最初の特徴は「分散化」です。
現在の一部にデータが集まっている状態を「中央集権化」と言います。その反対を「分散化」と言います。
つまり、今の一部のプラットフォーマーが管理するサーバーにデータが集まっている状態から、ネットワークに参加している端末にデータを分散させるというのが、ブロックチェーンのネットワークである、P2Pによるデータ管理です。
データ管理だけでなく、ネットワークの参加者同士が直接やり取りできるため、特定のプラットフォーマーを通す必要もなくなります。
また、利用するネットワークの方向性や登録するデータを決めるのも参加者自身です。
このように、「中央集権化」によって起こった問題を「分散化」することで解決を目指すのが1つ目の特徴です。
セキュリティ強化
暗号資産のことで言えば、暗号資産が盗まれたのはブロックチェーンではなく、取引所の提供するプログラムや誰かがデプロイしたプログラムからという場合がほとんどです。ブロックチェーン自体からということは、自分は聞いたことがありません。
ブロックチェーンは使用している暗号技術によるデータの登録やその記録の仕組みに加え、運用方法からもデータが改ざんされにくいことを実証しています。
また、分散ネットワークに参加している複数の端末(ノード)で、同じブロックチェーンのデータを保管するため可用性の高さもあります。どこか1箇所のノードが攻撃を受けても、他のノードが保持するデータで運用を続けることが出来ます。
動き続けることで最新のブロックが蓄積されるため、不正にブロックを加えることが困難な仕組みもあるのです。
しかも、暗号化技術により透明性を保ったまま、この運用ができるのもブロックチェーンならではですね。
データの扱いを決めるのはユーザー自身
現在のWeb2.0のインターネットでは、利用したことの記録はプラットフォーマーが管理しています。
それにより、ユーザーよりもプラットフォーマーの裁量権の方が大きく、それがユーザーにとっての利用条件や制限として現れます。
また、集まったユーザー情報を元にしたマーケティングが行われ、望まない情報提供がなされる場合もあります。
そのため、ユーザーが本当に必要とする情報が届かなかったり、最悪の場合プラットフォーマーの判断でサービスを利用できなくなる場合もあります。
これは中央集権的なプラットフォーマーが存在するからこそ起こることであり、「Web3」では分散されているため、そのようなことは起こりにくいと考えられます。
誰にインターネット上の行動をデータとして提供するか、誰からの情報をデータとして受け取るか。
それを決めることができるのは、利用者であるユーザー自身です。
「価値のインターネット」?
「Web3」の概念を元にしたサービスの特徴は以上ですが。まぁ。なんか分かりづらいですね。
概念なのでしょうがないですが、経済産業省が2022年12月に公開した資料にあった「価値のインターネット」という言葉がわかりやすくて良いと思います。
ざっくりと概要を書いてみますが。
Web2.0までのインターネットは、情報の伝達がメインで価値の伝達は出来なかった。
それを可能にするのがブロックチェーン技術である。
通貨・債権・株式といった金銭的価値を持つものはもちろん、デジタル分野での価値がつきにくいものや、今まで価値をつけられなかった分野にも価値をもたせることができる。
しかも、低コストでボーダレスに価値の移動ができる。
・・・ということですね。
日本ではWeb3関連の技術の中で、特にNFTに力を入れていくようなので、この価値の創出や移動の容易さというのは魅力的かもしれません。
今まで価値をつけにくかったもので言えば、ちょっとした権利関係もそうですね。
そういったものを証明する手段も、Web3の概念に含まれています。
様々な価値を共創・保存・交換することができるのは、利用価値があると思います。
「Web3」の主なトピック
このような概念に基づき、様々な分野で「Web3」技術が取り入れられています。
その中で代表的なものをいくつか簡単に紹介します。
DAO
DAOとは「Decentralized Autonomous Organization」の頭文字を取ったもので、日本語にすると「分散型自立組織」と訳されます。
ブロックチェーンの分散化という特性を活かし、特定の所有者や管理者を必要とせず、参加者の合意により運営する組織です。
意思決定は特定の暗号資産を使用した投票によりなされます。
そして、この暗号資産をDAO自身が発行することで活動するための資金調達が用意になると共に、参加者が貢献する形を選び報酬としても付与されます。
このようなブロックチェーン技術を応用することで、参加者自身の主体的な行動により運営される、新しい組織の形として注目されています。
DeFi
DeFiとは「Decentralized Finance」という英語で、日本語にすると「分散型金融」となります。
私達が普段給与の受け取りや振り込みで使用しているのは銀行です。
銀行に自分の口座から、相手の口座に送金するように依頼をし、お金のやり取りができます。
銀行という中央集権的な管理者により、システムが維持されている状態です。
簡単に言うとDeFiは、ブロックチェーンとスマートコントラクトを使用することで、銀行のような金融機関を通さず直接相手とやり取りできるようにするサービスの事を言います。
ブロックチェーン上のものなのでやり取りする通貨は暗号資産ですが、現実の金融サービスに近いものが提供されるようになっています。
ここ最近では、暗号資産を稼ぎ他の暗号資産と交換するといった、独自の経済圏を作り出すサービスも登場しています。
NFT
日本のWeb3関連の中心に位置づけられているのがNFTです。
NFTとは「Non−Fangible Token」といい、「非代替性トークン」と訳されます。
つまり、替えが効かない固有の価値を持つトークンで、音楽・アート・チケットといった価値がつけにくく、特定することが難しかったデジタルデータに価値をもたせることができるものです。
ちなみに、ビットコインやイーサといった暗号資産はFT(Fangible Token)といいます。これらの通貨のトークンは、価値を表すものは単位(ビットコインはBTC、イーサはETH)の前につく数字です。なので、BTCという通貨単位自体に固有の価値がなく、取引に使う数量で価値が変わるため、代替可能なトークンとなります。
つまり、NFTは1つのトークンが何か固定の価値を付与することができるので、1つのデジタルデータに対して一定の価値を付与することができるのです。
なので、コンテンツ大国といわれる日本の財産をデジタルで証明できる手段として、日本は力を入れてるのです。
そこから派生して、建物の権利を証明する手段として使われたり、コンサートのチケット、クーポン券として使われています。
要するに、何かの権利に価値をつけそれを証明する手段としても、注目されています。
暗号資産
ここで言う暗号資産は、Web3の概念を受けた暗号資産です。
貨幣と同じような使い方などの、ここまでに出てきたような価値の移転の記録のためにブロックチェーンを使用し、そのブロックチェーン上を移動するための暗号資産が多かったのですが。
ブロックチェーンのシステムを維持するために発行される暗号資産や、ここまでに上げてきたWeb3の特徴となるトピックを支えるために発行する暗号資産など、目的や発行されるものも様々です。
投資を目的に暗号資産を調べている人でも、値動きだけでなく購入しようとしている暗号資産が目指しているものや実現していることなどを知ることで、選びやすくなる可能性もあります。
Web3の概念から考えるとこれから多くのプロジェクトが立ち上がると思うので、その内容を知ることがさらに重要になってくるでしょう。
「Web3」はこれからのインターネットを作る概念
ということで、Web3とは何なのか。分かったようで分からない概念について書いてきました。
一言でまとめるなら、「これまでのインターネットの発展により起きた問題の解決手段として提唱された概念の一つ」と言えるかもしれません。
ブロックチェーン技術により今までにない分散化されたネットワークや価値の形が実現されています。
そのため、様々なユースケースが先行して話題になりやすいですが、重要なのはブロックチェーンの技術によりどのようなことが実現され、どのような問題が解決されるのかです。
「Web3」の概念の中心である、「分散化」と新たな「価値」でどのような世界が作られていくのか。
とても楽しみです。
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